故郷よりの手紙

日記、感想、メモ、愚痴を書いています。

メキシコの惨状 拉致された警官とその息子

YNCに投稿されたとある動画は、目を背けたくなる程の異様な凶行が写っている。

ゲレロ州山間部で撮影された動画は中年の男性とその息子が縛られ、地面に座る二人をアサルトライフルやナイフで武装した男達が取り囲んでいる所から始まる。男達は父親を木の棒で何度も殴りつけたのち、息子の目の前で父親の首を小ぶりなナイフで切断する。海外ネット上を騒然とさせたのはこの後である。男達は息子の左胸にナイフを突き刺し、えぐるように胸部に穴を開ける。必死で抵抗する少年の手足を抑えつけると、右胸部も乱雑に切りつけ、腹部まで肉と皮を削ぎ落とすのだ。左胸の穴からは呼吸とともに膨らむ肺が覗き、皮を剥がれた腹部からは胃が風船のようにはみ出ている。それでもなお少年は生きており、胸骨をナイフで叩き切ると穴に手を入れ、心臓を切り取られてようやく生き絶える。

そのあまりの凄惨な犯行と理不尽な暴力は、見るものを戦慄させる。その様はまるで初期未開社会の壮絶な闘争のようである。人間が国家を持つ前の、狩猟採集民に抱く平和な幻想を打ち砕くような、狩りと戦争に明け暮れていた祖先の遠い暴力を想起させる。

この二人の犠牲者の詳細については分かっていないが、この父親は警察官で、敵対するカルテルに情報を売ったことから息子共々拉致されたのではないかとされている。

メキシコでは40000人と見積もられていた麻薬戦争関連の失踪者が、60000人以上と訂正されて発表された。また、去年だけで31000人が殺害されている。